大腸憩室・憩室炎

大腸憩室・憩室炎とは

大腸憩室とは、腸管の外側に向かって大腸壁の一部分が外側に押し出され、風船のように飛び出したような穴のことを言います。
生まれつき大腸に憩室がある方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合は後天的で加齢に伴って憩室が出来ていると言われています。その憩室部分で炎症が生じるのが憩室炎です。
憩室炎は40歳以上の方でよくみられるようになります。この憩室炎はどの年代でも重症化してしまう可能性があり、高齢者の場合は特に注意が必要です。(特に免疫系を抑制するお薬を飲んでいる方だと、感染リスクが上昇するため非常に重篤な状態に陥ることがあります)

疫学

大腸憩室は欧米と日本で違いがありますが、どちらでも年齢とともに増えています。欧米では、昔は2~10%程度でしたが、今は40歳以上で約45%になっています。
日本では、以前は5.5%程度でしたが、最近では10.9%~39.7%に増えています。 欧米では男女差はないですが、日本では男性の方が多かったです。
しかし、最近では男女差がだんだん少なくなってきています。 大腸憩室の発生率は年齢とともに増えます。欧米では、40歳以下で10%以下ですが、80歳以上では50~66%になります。日本でも、40歳以下で16~22%ですが、80歳以上では42~60%になります。
大腸憩室は個数によって3つのタイプに分けられます。日本では、年齢が上がると、大腸憩室が10個以上あるタイプが増えます。30代では91%が2~9個の大腸憩室があるタイプですが、80代では約半数が10個以上の大腸憩室があるタイプになります。 大腸憩室は、大腸の異常なふくらみで、右側型(右側の結腸に発生)、左側型(左側の結腸に発生)、両側型(両側に発生)に分類されます。
欧米と日本では、発生部位に違いがあり、欧米では左側に多く、日本では右側が多いですが、最近では日本でも両側型が増えています。
また、年齢が上がると左側結腸の憩室が増加する傾向があります。 大腸憩室の原因は、低繊維食が関係しているとされており、日本人の食生活の欧米化により、両側型が増加していると考えられます。
しかし、右側結腸の大腸憩室の原因についてはまだよくわかっていません。
ほとんどの大腸憩室患者は無症状ですが、憩室炎や出血などの合併症を引き起こすことがあります。欧米では憩室炎が10~30%で見られますが、日本では数%で、頻度は低いものの、右側結腸に多いため、急性虫垂炎との鑑別が問題になることがあります。
大腸憩室出血は、欧米では3~47%で認められるが、日本では数%で頻度は低いです。しかし、高齢者や抗血小板薬を服用している人の出血例が増えることが懸念されています。

憩室炎の原因

憩室炎の原因大腸憩室炎は、大腸の憩室と呼ばれる突出部分が炎症を起こす状態であり、以下の要因が関与しています。まず、憩室内に便や食物が滞留することがあります。
憩室は通常、便や食物の通過が遅くなりやすい場所にあり、そのため便や食物が憩室内に停滞し、そこで細菌が増殖して感染が起こりやすくなります。 また、憩室自体の壁には弱点が存在し、この弱点が拡張されることがあります。
壁の弱点が広がると、憩室の内部が破れる可能性が高まります。このような状況下では、腸内細菌が憩室内に侵入し、そこで繁殖することがあります。侵入した腸内細菌による炎症反応が引き起こされます。
さらに、憩室が破裂すると、憩室内の内容物(便や細菌など)が腹腔内に漏れ出します。
この腹腔内の漏れ出しは腹膜炎と呼ばれる炎症を引き起こし、重篤な合併症となります。

憩室炎の症状

憩室炎の症状憩室炎でみられる主な症状としては、腹痛と発熱があります。腹痛、憩室部位に限局した圧痛(押したときに痛む)、発熱、吐き気、嘔吐などの症状がみられます。
重篤な合併症としては、膿瘍(膿)の形成や、腸の穿孔(憩室に穴が空いてしまうこと)による腹膜炎を引き起こすことがあります。
憩室穿孔を来たした場合は、手術や入院加療による緊急処置を要することがあります。

憩室炎の検査方法

大腸カメラ検査急に腹痛を感じるようになったり、発熱を伴う腹痛がみられる場合は、炎症の強さを検査するために血液検査を行うことがあります。 また、緊急で処置を行う必要があるのかを調べるために腹部超音波検査(腹部エコー検査)を行うこともあります。
また腹痛の原因精査のため、大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を行う場合もあります。




大腸カメラ検査について

大腸カメラ検査とは先端にカメラが搭載された専用のスコープを肛門から挿入し、大腸全域を観察することができます。大腸カメラ検査では専用のカメラを通して直接大腸粘膜を観察することができるため、精度の高い検査を皆様に提供することが可能となります。
当院では検査を快適に受けて頂けるように様々な工夫を行っていますので、ぜひ当院の大腸カメラページもご覧頂ければと思います。

大腸カメラ検査

憩室炎の治療方法

薬物治療憩室炎の治療方法は、病状・重症度などによって異なります。発熱や腹膜炎症状が見られていない軽症な場合は抗菌薬の服用が主に行われます。病状や症状が中等症から重症である場合は、絶食して頂き入院での集中治療を受けて頂きます。



憩室炎の予防

憩室炎の予防大腸憩室炎の予防には、適切な生活習慣の維持が重要です。食物繊維の摂取や便通の改善、適切な水分摂取、適度な運動などを行い、便の正常な通過を促すことが推奨されます。
早期の診断と治療も重要であり、憩室炎の症状が現れた場合は医師の診察を早期に受けましょう

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